構造を知り、敬服の念を抱く

ターミネーター1作目製作時のスタンウィンストンスタジオの仕事には敬服の言葉しかありません。今回の作品製作の過程において、私はその念を幾度となく抱きました。少なくとも、彼らの仕事は「低予算映画」だの「B級映画」だのというイメージからは完全に乖離しています。エンドスケルトンはもちろん、このT1エンドアームの造り込みからは「コダワリの塊」「英知の結晶」という言葉しか生まれてきません。

t1 endoarm 構造を知り、敬服の念を抱く 001

その背景にあるのは、「考え抜かれた可動機構と人間の骨格を模した意匠の両立」です。おそらくまず彼らは「掴む」ことが可能なギミックを考案し、それを実現してなおかつ人の手として違和感のないシルエットとなる各部品形状を練ったのだと考えられます。私の作品の工程はその全く逆で、まずシルエットの再現ありきで進めていき、工程を追うごとに「なるほど!」と可動機構の仕組みを理解していきました。この幾度に渡る「なるほど!」にはいくつかの意味があります。私がそこまで進めてきたシルエットの再現がほぼ正確であったという確認と、それらシルエットが可動機構上矛盾がなく極めて合理的であることの発見を意味しました。その度に、「当時のスタンウィンストンスタジオのクルーはマジすげえな」と感心しきりでした。おそらく究極の職人集団だったのでしょう。低予算だからと手を抜かない精神と、それらクルーを統括していた故・スタンウィンストン氏には敬服あるのみです。

t1 endoarm 構造を知り、敬服の念を抱く 002