中手骨
ここからは具体的な構成部品の考察と製作記録のご紹介です。
T1エンドアームの意匠で最も特徴的な部品のひとつがこの中手骨部品です。ここの再現を間違えると全てのバランスが破綻してしまう重要な部品でもあります。3D出力時の第一原型を元に、『資料』を参考にブラッシュアップしました。『資料』にはいくつかの汎用部品、例えば規格もののビスや乾電池などが写っており、それらのサイズを基準として最終的な形状と寸法を割り出しました。驚くべきは、『資料』の入手前の3D原型製作の時点でほぼ完璧な数値を我々が掴んでいたということです。これはアシスタントの加藤君の考察能力とモデリングスキルが確かなことであったことの証明で、私自身とても誇らしく思った事実です。
最終的な仕様を確定させた後に、その数値を専門業者に出してアルミ切削加工をお願いしました(この業者さんにお勤めのMさんはアニマトロニックバストの製作を依頼下さった方で、今回何かと尽力頂きました。この場を借りて改めて御礼申し上げます)。「なぜ3D出力原型ではダメなのか、アルミに置き換えるのか」についてですが、私の所有する出力機は簡易なものであるため表面の凹凸が激しいというのがその理由です。3D原型を磨きこんで表面を作ることもできますが、エッジを失ったり、せっかく割り出した寸法に誤差が出たりするのを私は嫌いました。最終的にはプロップの持つエッジの欠けや曲線を手作業で再現するのですが、その元となる原型は極力キレイなほうがよいのです。
第二指~第四指(人差し指から小指)までの4本には、この部品が共通で使用されていますが、それぞれ全長が異なります。
個体により微妙に違いがあるものの、基本的には指の長さに比例してその長さが変えられています。個体によっては中指よりも薬指の方が長い場合がありますが、『資料』の内容に準拠して長さを決定しました。
また、この部品は手首部分の板状部品(以下「手首板」)に「溶接」されています。今回私の作品では中手骨も手首版も樹脂による成形のため溶接は不可能で、手首板の方に支柱を立て、中手骨底面に接続穴をあけて接着し、付け根部分には溶接跡の表現を施しています。
この接続・接着に際してはそれぞれの指の「開き具合の角度」に最も気を遣いました。これもやはり『資料』をもとに最終的な仕様を決めています。「開き具合」のほか「倒れ具合」も重要な調整要素です。せっかく再現した実物のシルエットも、ここでミスをすると致命的なのです。
REMAINS of the first terminator