#017 : 大きな葛藤

上半身のみになったエンドスケルトンがサラを追うシーン。

上半身のみになったエンドスケルトンがサラを追うシーン。

エンドスケルトンの後頭部にシリンダー部品が見当たりません。 class=

エンドスケルトンの後頭部にシリンダー部品が見当たりません。

T-STUDIOの信念として、「Animatronicsによってエンドスカルを動くようにする」という大前提とともに「プロップや劇中のシルエットを極力崩さない」という考えがあります。頭蓋骨内部に可動メカを仕込む際、その固定のためのプラスのビスが丸見えだったら大きな興ざめです。また、可動範囲を広げるためにあちらこちらと削ってシルエットを崩したのではやはりマニアを失望させることでしょう。「もし実際にターミネーターが存在したら」という前提で話を進めると、おそらく現代の技術であのCPUを作ることは不可能でしょう。しかし、駆動部分に関してはあっと驚く仕組みが使われていたとしても、真似のできないものではないはずです。「分解して内部構造を見てみたい・・・」と何度思ったことか。しかし、残念ながら実際にターミネーターなど存在しません。1作目の終盤でのエンドスケルトンはラジオコントロールやワイヤー制御、または人の手によって動かされているのであり、各可動部分に機械工学上の理屈や合理性を持たせる必要はないため「矛盾だらけ」なのです。もしあのシルエットのまま動かそうとしたら、その可動範囲は人間のそれには到底及ばないでしょう。カイル・リースによって爆破され、上半身のみで追跡するシーンでは後頭部シリンダー部品は取り外されて撮影されています。つまり、「あんな部品がついていたら、あのような姿勢はとれない」ということなのです。

私が「エンドスケルトンを動かしたい」と志した瞬間から「メカニズム部門」「造型部門」の間で大きなジレンマを抱えることとなりました。

「可動範囲を優先すると、シルエットがを崩さなければならない」「シルエットを死守しようとすると十分な可動範囲がとれない」
この二律背反のテーマと戦いながら、ver.1.1は完成したわけですが、まだまだ納得がいきません。もっと人間らしく動かすためにメカニズムを見直し、可動範囲を広げたいのです。この戦いは、今後まだしばらく続きそうです・・・。