#013:クロームメッキについて
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6層クロームメッキが施されたパーツ群
「塗装」での金属の質感表現には限界があります。昨今では本物のクロームメッキさながらの質感が出せる塗料もあるようですが、下地処理の煩雑さを考えると実際にクロームメッキをかける以外の方法は思い当たりませんでした。「真空蒸着メッキ」では仕上がりに難があるため、コストがかかるのは覚悟で「6層クロームメッキ」で処理することに決めました。今回のようなソフトビニール・レジン・アクリルといった複合素材に6層クロームメッキをかけるには手間と熟練度が必要になり、日本国内でにある様々な工房に問い合わせましたがどこも「自信が無い」との返答でした。1社のみ、「やってみないとわからないが、面白そうなのでやってみましょう」という前向きな返答をくれる工房があったため、すがる思いで依頼しました。各部が複雑な形状なためいろいろと心配しましたが仕上がってきたテスト品を見てその美しさに即OKを出しました。メッキとはいえ、本物の金属です。その輝きと質感は塗装には叶いません。重量もズッシリと重くなります。文字通り「メタル」になったアニマトロニック・バスト ver.1.1の素体を眺めては、しばらく「ニヤニヤ」と「ため息」が収まりませんでした・・・。
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蒸着メッキとは比較にならない仕上がりです
ちなみに、皆様が所有のエンドスケルトンですが、あれはすべて「蒸着メッキ」です。若干「黄色っぽく」見えるでしょう。時間とともに「黄変」していくからです。6層クロームメッキはそういった経年劣化に強く、いつまでも美しく輝いてくれます。
尚、アニマトロニック・バスト製作の際にベースとなるM1号のキットはソフトビニール製であるため、6層クロームメッキ処理を施すにあたっては大がかりな下処理が必要となります。 メッキ処理中、高温に晒されることでソフトビニールは素材は変形してしまうため、これを防ぐために素体内部をレジンにて裏打ちして補強しました。 また表面にも極めて薄い塗膜の強化コーティングを施して補強しています。これにより、もともとは数グラムの軽いソフトビニール製の素体は一気にその重量を増し、頭部だけで2kgを超えることとなりました。 作品の外見上は、「重厚感を与える」という点で一役買っているこの重量増ですが、アニマトロニクスの観点からはこの重さの頭部を安定的に動作させるためとても苦労させられることとなりました。
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汚しの表現は最小限に抑えています
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クロームメッキの質感と輝きを活かしたアニマトロニック・バスト ver.1.2
研究と考察
関係者へのインタビュー