#003 : 眼球(センサー部)の発光について(その1)
「赤く光る目」はエンドスケルトンのアイデンティティであり、市販されている関連商品の多くはこの発光ギミックを搭載しています。オークションなどの中古品市場などでは、この発光ギミックが故障しているというだけでその価値は半分以下に落ちます。それほどこの部分の発光はマニアにとって重要で、エキサイティングな要素なのです。当然のように、T-STUDIO製作のアニマトロニック・バストにもこのギミックを搭載しています。しかし「ただ光るだけ」では駄目なのです。マニアのみなさんならご存知でしょうが、映画1作目と2作目では「光り方」が違います。1作目の中でもシーンや使用するプロップによっても違います。
このように、発光の仕方は様々です。「プロップに関する考え」の項目でも述べた通り、「正解」はありません。また私のこの考察を読むまで気づかなかったという人もいるかもしれません。私個人としては、1作目終盤の工場内での追跡シーンが最もお気に入りなので、T-STUDIO製作のアニマトロニック・バストにおいては「2枚目の画像」の発光の仕方を採用しています。この光り方を再現するために、あれこれと試行錯誤した結果に辿り着いたのが以下の内容です。
光源の赤色LEDから放たれた光は、まずAのパネル(1.5mm厚のプラスチック板を丸くカットしたもの)を通すことで光が「均一」になります。LEDの特性であり弱点でもあるのは、光が「直線的」で、「拡散性に欠ける」という点です。このAパネルがその問題を解決してくれるのです(ただ、厳密には「解決してくれている」というよりも「うまく誤摩化してくれている」と表現した方が正しいかもしれません。というのは、写真や動画でT-STUDIO製作のAnimatronic Bustの目を注視すると中心部分が明るく見えます。肉眼で見ると、パターン2のような均一な発光に見えるので問題ないのですが、厳密には「均一に光っているように見える」という具合です)。次に、Aパネルを通して均一に拡散された赤い光は、Bパネル(0.5mm厚のプラ板を丸くカットし、半透明の赤色シートを貼付けたもの)を通すことにより「より赤味が強く」なります。使用した高輝度LEDは赤色に発光するのですが、そのまま使用すると「ピンク」に近い赤色になてしまうため、全くの興ざめなのです。エンドスケルトンはあの「鮮烈な赤色」に発光する目が特徴なのです。Bパネルは、この点を見事に解決してくれます。次にCパネル(半透明のスモーク色のアクリルパネルを円形に切り出したもの)ですが、これは、「眼球レンズについて」の項目で述べた「消灯時は黒」に見え、「発光時にのみ赤色に光る」ということを実現するために不可欠な部品です。つまり、Cパネル無しでレンズを装着した場合、レンズを介してBパネルに貼った赤色シートの色が外から見えてしまい「消灯時は黒」という点を達成できないのです。もちろんレンズ部品は透明レジンに黒の染料を混ぜてスモーク色に成形しているのですが、見る角度によってはBパネルの赤色が見えてしまうのです。Cパネルの持つ機能はこの点を改善するためのものなのです。光源のLEDとレンズの間にA~Cの3枚のパネルを挟むことによって、当然輝度は落ちます。しかしそれを補って余りあるほどの高輝度LEDを採用しているので問題ありません。なお、レンズの色と同様にご依頼があれば2作目以降のようなリフレクター仕様のものも製作可能です。
研究と考察
関係者へのインタビュー