T2:プロップレプリカ ver.2029

T2:プロップレプリカ ver.2029
2029_about

「金属調塗装」の実験

アニマトロニックバスト製作時には頑なに「6層電解クロームメッキ」に拘ってきました。しかしプロップの再現を追い求めた結果、プロップ同様の「真空蒸着メッキ」を採用することとし、実際にOPプロップレプリカ製作において一応の成功をみました。しかしながら、さらにいくつかのプロップ写真を眺めていて「これはメッキではなく塗装だな」という個体も散見されたため、「金属調塗装」の実験の意味を込めて取り組んだのが今回の作品です。
ひと昔前の「メッキ調塗料」よりは質感があるものの、汚しに入る前段階の状態は到底蒸着メッキの輝きには勝てず、いざ汚しペイントに入るまでは不安で仕方ありませんでした。しかし、光沢のある部分と無い部分にそれぞれ適した汚しのペイントを施していった結果、画像のような「まさにどこかのプロップ」然たる仕上がりとなりました。つまるところ「ダメージ表現を施す前提ならば金属調塗装でもいける」ことがわかりました。

ギャラリー

各部位の解説

2029_rd_01

T2冒頭未来戦争シーンでのT-800

さて今回の作品の解説ですが、テーマは作品タイトルかわもお分かりの通り「T2冒頭未来戦争シーン」でのダメージ版T-800です。とある場所で実際に見たT-800のプロップの画像(残念ながら公開できません)を参考に、以前製作したダメージ表現レプリカとはまた一味違うペイントを施しました。前回の作品は、あるマニア所有のアイコン版特別仕様(スタンウインストンスタジオで汚しのペイントが施されたもの)を参考に試行錯誤で汚していったのに対し、今回は前回までのノウハウに新技法を加えて仕上げてみました。焼け焦げ・オイル汚れ・弾痕・衝突痕と、各部意図をもってのペイントです。

2029_rd_03

エンドスカルの歯を複製して使用

汚し以外の大きな特徴は2点。まず「歯」です。
これまではアクリル義歯に差替えていましたが、今回は昔入手したルーカスフランシススタジオ謹製のエンドスカル用歯パーツを複製・整形して使用しています。上側2パーツ、下側2パーツの構成ですので、いわゆる今までのような“一本一本”ではありません。しかし、プロップからのリキャストだけあって一本ずつの独立感は見事で、映画制作現場の合理主義的考え方が集約されています。

2029_rd_02
2029_rd_04

物理的なバトルダメージ表現

もう1点は、ペイント以外の物理的ダメージ表現です。口元のシリンダは破壊、左目も眼球ごと吹き飛ましてみました。この吹き飛んだ眼球の奥側については、T1で下半身が分断された際の上半身部分から伸びるケーブル類を参考に最低限の処理を施しました。「センサーの裏側なんだから当然何らかの配線は来ているだろう。複数配線の結束はなるほど特殊な蛇腹チューブか」と、あくまで現実的な解釈です。過度な独自解釈は失笑を買うだけですので、カラーコードやタイラップなどは当然使用しません。

アニマトロニックバストにおいて眼球可動メカニズムを開発したT-STUDIOですが、映画の中でのT-800は眼球はあくまで周囲のボール部品で制御していることになっているので、無用なメカニズム跡をここに組込む発想も全くありませんでした。またオイルラインの断線部分にも、“現実的可能性”から追究した私なりの解釈を施してあります。

2029_foot

この作品は3年前の私ならまず取り組まなかった表現です。「現実的可能性からの解釈」などとそれらしく言っていますが、結局は「妄想」であり「勝手な解釈」に過ぎません。勝手な解釈はただの自己満足にすぎず、ひいてはオリジナル作品そのものを侮辱することであるとさえ思っていたからです。しかし、ただプロップの真似をしていては刺激がないし、何より面白くない。というわけで、いつも以上に皆様のご感想を聞いてみたい気持ちでいっぱいです。