T1版エンドスケルトン全身像

Argonauts Endoskeleton

やっぱりフルボディは美しいです。これに筋肉と皮膚を被せると若かりし頃のシュワルツェネッガー氏になる…。人を模した機械の身体は数多あれど、これが世界一美しい、私はそう思います。ジム・キャメロンとスタン・ウインストン両氏、そしてシェーン・メイハンら当時のクルーに拍手です。

アルゴノーツ エンドスケルトン

「男は背中で語る」なんて言いますが、機械であっても雄弁です。

Argonauts Endoskeleton

T-STUDIOサイトで、M1号製エンドスカルキットに次ぐ登場(紹介)回数を誇る「アルゴノーツ製1/4エンドスケルトン」のキット。最初に紹介した記事の最後に私はこう書いていました。「私はいつかこのキットをT1版に改造したいと考えています」と。パートナー榎本がT-STUDIOに参画した2年前の今頃、私はこの夢を彼に伝え、そしてそれを叶えるべくプロジェクトはスタートしました。

Argonauts Endoskeleton

アルゴノーツ エンドスケルトン

具体的な闘いの跡について語る前に、今一度この変態キットについて現在の私の見解を述べます。膨大な部品点数(数える気にもならない)・可動機構を最大限活かすべく錬られたパーツ構成・部品の形状や求められる精度に応じてホワイトメタルとPVC(ソフトビニール)の素材を使い分ける発想など、常識を完全に超越しています。特筆すべきは、このキットの仕上がり(評価)を大きく左右する「シルエット」を限りなく等身大プロップに近づけるべく闘った当時の男達の逸話です。3Dスキャン技術などはまだ一般人に親しみのない時代、彼らはノギス片手にハリウッドにアポ無しで乗り込み、そこで得た寸法メモと写真だけで原型を製作したと言われてます。原型の殆どを担当した高橋清二先生に会う度、私はこの時の話を必ず伺うことにしています(「もしかしたらまだ聞いていない逸話があるのかも」という期待からで、今後も氏に会うことがあればきっとまた聞いてしまうと思います)。「なにぶん古い話だからねえ、あんまり覚えてないんだよ〜ガハハハ」と高橋さんは必ず前置きするのですが、出るわ出るわの強烈な仰天エピソードの数々(「実はノギスは持って行ってない」とか)。

Argonauts Endoskeleton

だいぶ前に紹介した当時の雑誌記事。高橋さんはいつもエンドスケルトンのことを「スケルトン」と呼びますが、この原型の後ろにある簡易キャプションの原稿も高橋さんが書いたのでしょう。しっかり「スケルトン」と書いていますね。さらによく見ると「映画に使用された1/1サイズのモデルの各パーツを実測して原型を製作」とあります。こんなことをサラリと述べられる男に僕もなりたい。

アルゴノーツ エンドスケルトン

このキットをT1版で製作するに当たって最初に決めた改修箇所は主に①胸郭内部をプロップ通りの伽藍堂状態にする②膝とハンドの意匠をT1版に改造③両足を短くし、より実物に近いシルエットにする、という3点。このキットの唯一の難点である「強度」を材質置換や補強によってカバーするというのはT1版改修云々に関係なくこのキットを組む上での必須作業です(当時の作例記事にも、メーカー側の見解として「補強を推奨」とあります)。

アルゴノーツ エンドスケルトン

キットでは塞がってしまっている胸郭内部の壁をバリもろとも切り取り、内側面を整形した後にレジンへと置換したのが手前側の白いパーツ。榎本君がファンドとエポパテを駆使して成し遂げた改修第一段階の様子です。

アルゴノーツ エンドスケルトン

同じ手法で、キットのPVCパーツを切り詰めてレジンに置換した短足化作戦第一弾の大腿部パーツ。

1/4 エンドスケルトン

さらに第2弾として足首(脛骨下)部分を加工。この作業により、グッとT1版全身ヒーロープロップ然としてきます。とても効果的です。

HOTTOYS SIDESHOW Endoskeleton

1/4 ターミネーター

アルゴキット付属のハンド部品はホワイトメタル製で、驚異の「全関節独立で成形」されており、しっかり可動します。これこそこのキットの最も変態な要素の一つなのですが、それに敬意を表しつつも断腸の想いで(迷い無く)T1版ハンドに換装。こう書いてしまうと余りにも簡単そうですが、実は今回の製作でとても苦心した部分の1つです。私が3年前、プロップに忠実に製作した1/1スケールのT1ハンドの部品を元に、デジタル技術を駆使すること無く榎本がアナログ手法でフルスクラッチした入魂の造型。そして掌側のシリンダー&ロッドの再現や指関節操演用のワイヤー機構の追加もぬかりなく。「こういう変態性がT-STUDIO作品の真骨頂なのだ」とばかりに身体を壊しながらも成し遂げた榎本の男気です。

1:4 Endoskeleton

頭部は、やはり以前に紹介した謹製1/4ヘッドに換装。小阪さん原型のキットの頭部や、お蔵入りした高橋版、どれもオーラ満点ですが「プロップに忠実に」となるとこの謹製T1ヘッドの登場となるのです。電飾のために内部は中空成形で、さらにスペース確保のため掘り込んでいます。ちなみに電源は3Vボタン電池で胸郭内部に収納されていて、ON/OFFは胸郭下部の通称「前掛け」の裏側に設置した極小トグルスイッチで操作します。

1/4 Endoskeleton

頭頂部の意匠もこの通り。これを再現しているのはツクダのPVCキットとSCOOPのキットだけ。T-STUDIOは歴史上3番目の後発組です(先人達に敬礼)。

1/4 エンドスケルトン

やり始めたら止まらない。やるなら徹底的に、の思想のもと当初のプランにはなかったケーブル類も完全再現。太さや質感も、実物の資料をもとに1/4スケールで。

1/4 エンドスケルトン

こういう部分をしっかりやるかやらないかで「オーラ」の漂い具合が全く異なります。そして最初の画像とこの画像の比較からもおわかりのように、上半身の可動機構は最大限残しています。1/4サイズで可動と言えばホットトイズもしくはNECAですが、あそこまでの可動を求めると細部の意匠を犠牲にせねばならないので潔くオミット。肩からハンドまでの関節が動くだけで、充分に表情づけはできるのです。

1/4 エンドスケルトン

背面に目をやると、ムキ出しのケーブル類を存分に楽しめます。もちろんプロップ準拠で、足さず・引かずの信念で完全再現。上半身可動に関してのキモとなるボールジョイントに関してはここの位置に埋め込んでいます。

Argonauts Endoskeleton

もしヤフオクに出すならばタイトルは「アルゴノーツ1/4キット徹底改修・T1版エンドスケルトン完全1点モノ」という具合でありますが、これは2年間お待ち頂いている依頼者様の元へ間もなく旅立ちます。当初の自発的製作プランでは入っていなかった「各部ワイヤー・シリンダー・ロッドの追加」「謹製頭部への換装」「可動機構残し」を躊躇無く敢行できたのは、依頼者様の希望だったことと、それら作業へのご予算を工面して頂いたからに他なりません。

T-STUDIO エンドスケルトン

掲載するのは憚られるほど恥ずかしいこの「眼球周囲ボール部品施工の図」ですが(ボールというかタラコ粒)、この作品の変態性をわかって頂くために決死の覚悟でご紹介。榎本君はことごとくこういった変態的光景に気付くとスマホ片手に僕の傍らに走ってきます。何が恥ずかしいって、僕の口元がちょっとニヤケているから。きっと撮影に駆け寄ってきたエノやんが面白かったからであって、グヘヘヘとか言いながら作業を楽しんでいるのではありません。そこまで行くと変態とかを超えてただの基地外です。

アルゴノーツ エンドスケルトン

ここで敢えて塗装前の状態をご覧頂きます。昔なら「エノやん、各部品ごとに塗装せないかんからバラせるようにしといてよ」とか恐ろしいことを言うところですが、今のT-STUDIOには「銀鏡システム」があるのでこのままバラさずにメタリックにできてしまいます。銀鏡は簡単に言うと「水と薬剤を交互にぶっ掛ける手法」なので、普通の塗装では塗料の粘度の関係で回りきらない細部にも、しっかり銀が施されるのです。

アルゴノーツ 改造 エンドスケルトン

起草・監修・総指揮は僕でも、面倒で緻密な実作業のほとんどは榎本の手によるもの。可動箇所の処理やパイピングの考察・部材選定も彼に一任していました。一番驚きなのは、この子「自立」するんですヨ。僕が理想とするポーズを、榎本が絶妙な重量バランスに調整してくれたおかげなのです。スタンド無しで立たすことができる意義は、スケールモデルのコレクターさんならばよくおわかりかと思います。

T-STUDIO Endoskeleton

この作品を見て「自分のアルゴキットも組んで欲しい!」となった方。少しばかり大きな壁が立ちはだかるかもしれません。先日のOPプロップレプリカの数倍の仕事量なのでそのおおよその費用は想像に難くないと思います。無論、一般の相場の倍(3桁万円近く)出してでもこれを所有したい・飾りたい・眺めたいと思うか否かは個々の価値基準によります。しかし結局のところ「自己満足」の概念的・観念的スペースをいかに広く取れるか、簡潔に言うと「他人の評価は関係ない、自分の評価が全てだ」という今回の依頼者さんのような方でないと踏み込めない世界のように思います。この依頼者さんの男気や情熱、T-STUDIOへの期待と信頼、そういったものが僕らを奮い立たせ、強い想いと魂が作品に宿り、そして最終的に作品が醸し出すオーラに現れるのだと信じて疑いません。

エンドスケルトン T-STUDIO

過去最長のコラムもこの画像で最後になります。コラムというか、完全に作品詳細解説ページの様相ですね。同じ1/4スケールのサイドショウ製やNECA製は、このアルゴノーツのキットをそのままパクって(コピーして)いいとこ取りし、それぞれの製品コンセプトに合わせて細部が変更されています。最近では、ホットトイズの1/4も高評価を得ていましたが、新規原型でこそあれやはり可動機構優先のシルエット破綻と○っぽいメッキ処理が致命傷となってアート的側面からすると評価がとても難しいところ。僕も榎本もT-STUDIOとして行ったのは「伝説のキット」に最大限敬意を表しつつ各部をブラッシュアップさせて頂く、というスタンスの仕事です。キットの製作難易度ゆえに、生産されたうちの殆どが未組み立てのまま死蔵されているであろうことは明白ですが、それでもこれに果敢に挑戦した猛者は私の知る限りでも数名いらっしゃいます。仕上がりやオーラに関しては今回の作品が世界最高峰のものである自負がございますが、でもこれは特別な例のひとつとしてお考え頂き、どうかキットを所有のみなさんは勇気を持ってトライされてみては如何でしょうか。高橋・小阪・千葉という大先生たちによるこの傑作キット、パーツ構成や作り込みを知れば知るほど色んな発見が必ずあると思いますよ。

T-STUDIOの信念に共感くださるあなたへ

既存製品のクオリティにがっかりしておられる本物志向のあなた、ぜひお手持ちのキットやプロップレプリカをT-STUDIOにお送り下さい。T-STUDIOが魂を込めて改修・製作します。

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