#010 : 歯について
スタン・ウインストン氏は生前のインタビューで、「1作目のエンドスケルトン製作時、アーノルドの体型(骨格)から歯並びまでそっくりそのままコピーした」と語っています。下の資料写真のアーノルドの歯並びを見ると、なるほど、前歯の隙間から犬歯の形状まで、我々がおなじみのあの「エンドスケルトンの歯並び」とほぼ同じなのがわかります。T1公開後、一躍ビッグスターとなったアーノルドはT2のクランクインまでの5-6年の間にこれら特徴的な歯並びを奇麗に矯正してしまったようですが、T2のエンドスケルトンを見ると依然として1作目の歯並びのままです(カリフォルニア知事にまで登りつめた偉人の歯並びの変化についてこのように検証することはご本人に失礼極まりないのですが、エンドスケルトンを考察する上では外せない要素なのでどうぞお許し下さい。あくまで歴史的大作映画の資料的側面からの検証なので・・・)。
アニマトロニック・バスト製作にあたっては、この部分の仕様にとても悩みました。プランは3つ。1つ目は「アーノルドの歯並びに忠実なM1号社製キットの造型をそのまま使い、塗装により歯の質感を表現する」というプラン。2つ目は、歯科技工士が義歯製作時に使用する自然な色合のレジンで、一本一本の歯を製作する」というプラン。3つ目が「歯科医が使用する既製品のアクリル義歯を使用して、一本ずつ埋め込んでいく」プラン。
塗装による表現はやはり限界があるとみて、1つ目のプランは早々に断念しました。2つ目も、資材は入手できても、手間とコストがかかりすぎるということで却下。最終的に、ver1.0においては3つ目のプランを採用することとしました。私個人としては、将来的にはぜひ2つ目のプランに挑戦したいと考えています(かなりクレイジーな行為とは思いますが)。
既製品のアクリル義歯といっても、様々な形状・大きさ・色味・材質があり、高価なものになればなるほど本物の歯に近くなり、強度も上がります。ただ、今回のアニマトロニック・バストにおいては強度は必要ない(ものを噛んだりはしない)ので、形状と色味を重視してチョイスしました。実際に歯を一本ずつ配置していく際、前歯に隙間を開けたり犬歯を小さめに削ったりしたい衝動に何度もかられましたが、終わりが見えなくなるのでぐっとこらえました。
なお、2作目のオープニングで炎の中から現れるエンドスケルトンですが、あれに使用されたプロップの歯はクロームメッキ処理が施されています。とても重要なシーンに使用するとあって、あのプロップは特に表面処理を丁寧に行ったと言われています。各部品の造り込みも素晴らしい出来で、T-STUDIOのアニマトロニック・バスト製作時には大いに参考とさせてもらいました。
研究と考察
関係者へのインタビュー